入院生活

 8月24日にやっと入院できた。38℃台の熱が出てすでに9日目。同じ区内だけど車で10分ぐらいの場所にある中規模病院。お迎えのバンがきて自分で荷物を運び、到着は一般の診療が終わった時間なので無人の廊下を進み病室まで行く。部屋につくまではドアや壁に触らないようにと防護服着用した迎えの看護師さんに言われる。最上階の7Fがコロナ病棟になっていた。

部屋に着いて持参したバナナを食べ薬を飲んでその日は21時に就寝。

 翌朝は6時起床、あまり眠れず指がしびれている。
一日に4回、自分で体温計とパルスオキシメーターと血圧計で測った数値をスマホで撮影してラインで送りチェックしてもらう。
医師の診察もラインというのに驚いたけど、感染の危険を避けるのには理にかなっている。
この日はCT検査と血液検査(採血のため入室した看護師さんはもちろん防護服を着用)をして採血管(←調べた)に6本くらい採った。
CT室に移動した一回を除いては病室から一歩もでない隔離状態。だから他に何人ぐらい入院してたのかもわからない。部屋は陰圧されているから、一歩も出るな窓も絶対に開けないように言われる。
 
病室にはトイレとシャワーもあり、シャワーはユニットだけど腰掛けるためのへこんだ部分があって、これが衰弱してる時にシャンプーするのにとても助かった。

私は体力はないけど大病しないタイプなので今回が初めての入院体験。部屋のwifiにU-NEXTつないでマッタリしてたらもう晩ごはんの6時。おかずに苦手な納豆がでて「これから納豆しょっちゅうでるのかな…」と少し泣けてくる。自分で思い出すと笑えるけどそのときは弱ってたんだ。
 
病院食は当たり前だけど白身魚や鶏胸肉に人参やブロッコリーゆでたのとかでめちゃ薄味、パンが出たときはトーストしない白いままの食パンにマーマレード、ううう〜トーストしてちょっとだけでいいからバター塗って〜という気持ちを我慢してもそもそ食べる。
 たまにフルーツつくと嬉しかったな。甘味に飢えてるので、花輪和一も「刑務所の中」でアルフォートを大事そうに食べていたなと思い出す。
 
明け方に熱と咳が止まらなくなり薬とアイスノンもらう。やはり薬が切れると38〜39℃台になってしまう。

朝になりステロイドや色々を点滴してもらうことになり、あの鼻にチューブの酸素吸入もする。パルスオキシメーターも高性能のやつ(看護師部屋と常につながってる)に代えられて昨日までののんきな様子と大違いに。
しんどくて寝たきり状態になってしまい起き上がるのはトイレと食事だけ。トイレも点滴のセットをよいしょよいしょと運ぶから時間がかかる。今なら椎名林檎の真似できるわとしょうもないジョークをつぶやく相手もいない、ふぅ〜。

寝たきり三日間

点滴用の血管が見つからなくて看護師さんに腕の内側をしっぺみたいにバシバシ叩かれ、「これは映画で何度もみたヤク中がやるやつ!」とちょっとおもしろかった。結局、手の甲側の手首に針をさされ痛い事になる。ちょう痛い。三日後に抜いた時は竹串ぐらいのけっこうな穴が空いてた。
毎日、点滴の中身や数も変わっていたけど、どれがなんなのか確認する元気もないので任せっぱなしでただ点滴と天井を見上げていた。
 
 点滴が終わって2日ぶりにシャワーを浴びるとフラフラする。針が刺さったままで水が入らないようにラップ巻いてもらい、座ったまま片手はシャワーのカランに乗せて、右手で風呂用ブラシで髪の毛をといてなんとかシャンプーする。
 
薬の副作用で不眠が続き「入院中の心のささえ」でも書いたけどウルフの「幕間」を明け方に読み終わる。あとがきでウルフの死の前の作品だったことを知る。
 
誰とも会えず喋れないのってこんなに寂しいものなんだな、窓から高速を走る車を眺めながら自分の存在まで薄まってしまったような気分になる。
入院から8日目に一般病棟に移動。

入院患者の一日

 移った部屋は個室で1日18000円なり、たっか〜〜い!!!全部が公費じゃないのにびっくりした。これがホテルならそこそこいいお部屋なのにと一瞬思うが、ハイハイここは病院ですよね〜。わかってはいるけど自費なんだもん。
 
でも隔離でさびし過ぎた反動で、夜中に大部屋のお年寄りのうなされている声が聞こえてくるのすら他人の気配があって嬉しい。生きる!

ヤマ場がすぎ少しマシな体調になって、日中に座って映画みたりはできるようになる。
それでうっかり「バリー・リンドン」鑑賞がまずかった。面白かったゆえに厭世感でぐったりしてしまう。悲惨で哀れなことの多い時代に自分の幸福を追求したバリーの物語、最後の文章(悪人もそうでない人も今は皆土の下。←うろ覚え)にトドメをさされ、昔見たときよりはるかに落ち込んじゃったわキューブリックめ〜。
 
リドスコのデビュー作デュエリストはこれの影響受けてると思ってたけど、たったの二年後に製作されてんだな。10年以上離れているイメージだった。
そして映画の余韻と薬の副作用で眠れなくてつらかった。
 
6時に起きて21時に消灯。一日三回の食事と体調のライン報告4回、シャワーの時間は予約して午後に浴びる。シャワーの後にネットで映画一本見たらもう夕食の18時。こんな規則正しい生活は学生時代でもしなかった。

 シャインマスカット

差し入れで 初めてシャインマスカットを食べたんだけど、昨今のぶどうの品種改良すごいな。甘くて皮が気にならないし粒も大きいし贅沢。ローマ貴族の気分。後半は病院のごはんだけだと物足りなくてフルーツとクッキーの甘さが嬉しかった。
 
あと小さい病院なので売店がなくて、コンビニの宅配してもらおうと思ったらそれはダメだった…。マップでは付近にコンビニもスタバもいっぱいあるのに買えないのだ。うぐぐぐぐ〜。
 
自販機はややマイナーなメーカーですべてが甘たるくて、ポカリ的なスポーツドリンクまでびっくりするほどマズくて捨てた。ヨーグルトやトマトジュースのさっぱり味が欲しくてたまらなく、退院したらすぐに飲むぞと誓う。
 行動が制限されていて自分の希望する飲み物すら飲めないのは地味に辛いもんですな。
 
閑話休題。

薬は多いときで8種類ぐらい解熱剤と咳止めにビタミンや血栓予防に胃薬、もちろんステロイドも飲んでたので副作用は色々あった。代謝がバグった話は「入院中に必須ではないが役立ったもの」参照。
主に困ったのは不眠と便秘、眠剤はこちらから欲しいと言わないと出されないのか、ギリギリまでガマンしすぎて損した。眠りについても二時間きっかりで起きてしまうのは退位後も続く。

娯楽はサブスクとネットラジオ

 「バリー・リンドン」の轍は踏まないように眠れなくなりそうなシリアスなのは避けて、既知のものだけにする。
「オデッセイ」「ブルース・ブラザーズ」「パシフィック・リム」「スパイダーマン ホームカミング」(その頃はNWHがこうなるとは…)等々、前向きなラストで終わるやつで寝付きを良くする作戦、あらまあ面白そう。
特に「キリクと魔女」のミッシェル・オスロ監督の「夜のとばりの物語」は影絵のようなシルエットの人物に短いお話のオムニバスで就寝前の鑑賞するのにとても良かった。 (しかし不眠は改善されず。)

退院する前の2〜3日はネットショッピングもしてた。退院したらお世話になった友人関係に送るお菓子とか、自宅療養の気分があがるよう自分のワンピなどを物色。
あと自宅のコロナ菌(←そんなものはありません)びっしょりの古い布団ではもう寝たくないので上下とも新調。 お金はとんだけど低反発のにしてから腰が楽になった気がする。
 
本は「幕間」と読みかけだったレベッカ・ソルニットの二冊だけ。
入院患者用の本コーナーにあった田辺聖子の江戸時代の商家の女将さんたちの紀行文についての「姥ざかり 花の旅笠」もちょっとだけ読んだ。船でどこかの港についたら旅人目当ての娼婦がやってきて、体を買うわけにもいかないのであん摩してもらったとか。

部屋にあったテレビは一度もつけなかった。普段から見ないし。
 

退院

心電図やレントゲンから判断した医師が病室にやって来て「そろそろ退院しますか?」ときかれ 、退院が週末に決まる。

看護師さんたちの控室にいって退院の挨拶をしてくる。タメ口で明るいギャルっぽい人やメガネでギーク感ある人やベテランの人など色んな看護師さんがいて、本当にお世話になりました。
 
入院したときは真夏日だったのにそれから雨続きでぐっと秋ぽくなってた。
隔離病棟と一般病棟あわせて12日間の入院生活だった。
9/4に退院。
 


 
 
 
 

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